基板加工機とは何か?


今回は、製品開発や研究などに古くから重宝されている基板加工機の概要、新たに搭載されている機能の紹介、いろいろな加工用途などについて、より深く触れたいと思います。
未だ基板加工機をご使用されたことがない方や今後導入を検討されている方のヒントになればと思います。

<目次>
1.基板加工機とは?
  切削イメージ
 2.工具について
  工具イメージ
 3.加工用途
  突き当て治具
  内層露出
  断面観察
 4.加工方法及び用途
  加工パターンイメージ
  ツールホルダー
  深さ調整センサ
 5.加工データ
 オプション
  ペースト式スルーホール

<基板加工機とは?>

基板加工機とは、切削加工により導体部を除去し、ドライプロセスで配線加工が行える装置です。1970年代に開発された装置で、古くから国内外で幅広く使用されています。装置一台で片面及び両面基板の作製が可能です。従来は切削のみによる配線加工でしたが、最近はレーザを使用する装置もあります。

 切削イメージ
基板加工機とは

◎工具について
配線加工に使用する切削工具類は、絶縁溝加工用の刃物としてVカッター及びエンドミルがあります。
Vカッターは先端が尖った形状になっているため、加工後の導体端面が垂直にはならず、絶縁層もやや深めに加工します。ですが、1本で加工可能な切削距離が長く、配線加工には最も多く使用されます。弊社では、剛性を高めたダイアモンドコーティング工具もご用意しております。
対して、エンドミルは先端が平坦で加工後の導体端面が垂直になるので、特性が求められる高周波基板やアンテナパターンの加工に使用されます。また、余分な導体を広範囲で剥離する用途でも使用されます。

 工具イメージ


◎加工用途
基板加工機では、基板作製において配線加工以外に穴あけ加工及び外形加工が可能です。穴あけ加工は、0.3 mm程度の穴径から異形穴まで加工が可能で、外形加工は矩形や円形など任意の形状に切り出すことが出来ます。
加工可能な材料は、切削工具で加工が可能である紙フェノール基板、ガラスエポキシ基板などです。厚さ0.2 mm程度の薄い材料から、1.6 mm厚の基板まで加工可能です。アルミ材アクリル材などの加工も可能で、2.5次元加工も可能です。ポリイミドなどフィルム材に関しては、穴あけ加工と切断加工が出来ます。セラミック材の加工はできません。
加工パターンイメージ



下記、試作基板作製以外の用途をご紹介します。
・ザグリ加工や素子埋め込み用凹部の作製用途

・固定用治具・突き当て治具の作製やフロントパネルなどの作製用途
 突き当て治具


・簡易印刷フィルムマスクの作製用途

多層基板の内層露出加工用途
 内層露出




・貫通スルーホール穴の断面観察用途
 断面観察


・材料開発における加工性確認・断面観察用途

・実装済基板の簡易的な分割用途

・接着剤やはんだペーストのディスペンス用途

◎加工方法及び機能
従来、XY軸の制御はステッピングモータによる制御が主に採用されていました。決められたステップ値に基づいて、XY軸ボールスクリューを動かし位置決めを行います。移動時に異なるステップ値で制御する際、移動トルクにバラつきが発生し、高速での高精度移動が難しい場合がありました。そのような問題を解決するため、弊社のAシリーズでは従来のステッピングモータ制御にサーボフィードバック補正機能を追加搭載し、高速でも高精度位置決め移動を可能としています。

位置決めピンとアルミダイキャストテーブルにより行っていた基材の固定は、周囲をテープで固定した場合でも、基材の中心部が浮き沈みする問題がありましたが、現在では真空吸着バキュームテーブルを使用した吸着固定が主に使用されています。より基材を平坦に固定することで加工幅のバラつき加工残りを防ぎます。加工時には、加工ヘッド下部の基板押さえ部が基材に接触し、絶縁層の掘り込み深さを均一に調節します。弊社で取り扱っているAシリーズは、リアルタイムでZ軸深さを検知する機能を備えています。
また、CCDカメラが標準装備され、両面の位置合わせ方法も位置決めピンではなく、カメラで位置合わせ用マークを認識するようになっています。カメラでは、加工幅の測定加工穴の測定も行えます。

切削工具の交換は、現在では自動で行えるようになっています。通常、1枚の基板を作製するためには5種類から10種類程度の工具を使用する必要があります。加工時の工具交換は、ワンタッチで手動交換する方法と自動交換する方法があります。従来は、高スペック機種を除いてVカッターやエンドミル、異なる穴径のドリルを毎回手動で交換する必要がありましたが、現在は自動交換が可能な機種がほとんどになっています。交換に使用するツールホルダーは常に安定した工具交換を行えます。

ツールホルダー


切削幅の調整も、現在では自動で行えるようになっています。加工で主に使用するVカッターは、冒頭で触れたように先端が尖っており、加工する高さが深くなると幅が広くなり、加工する高さが浅くなると幅が狭くなります。そのため、従来は交換した工具の加工幅を作業者が手動で調整・確認する必要がありました。Aシリーズでは、全ての機種で深さ調整センサを使用した自動加工幅調整が行えるようになっており、片面の加工であれば加工開始から加工終了まで調整作業不要で加工を行うことが可能です。加工幅は工具毎にライブラリとして管理され、ソフトウェアで数値を任意変更することができます。尚、Nシリーズは、手動での調整が必要です。

 深さ調整センサ


加工の状態は、ネットワークによりオンラインモニタリングが可能です。本機能は、他社製品には備わっておらず、弊社Aシリーズのみの独自機能です。

◎加工データ
加工するデータに関しては、汎用基板設計CADやフリーソフトなどで設計した基板レイアウトデータをガーバーデータDXFデータとして出力し、それらのデータをそのまま加工データに使用します。基板加工機に付属しているソフトウェアにより、切削する導体部の加工データは自動で計算・生成され、工具の割り当ては自動で設定されます。両面基板を加工する際は、予め設定した認識マークをCCDカメラにより認識することで、表面と裏面の自動位置合わせを行います。

◎オプション
安全対策としてのインターロック付属専用カバーを使用したり、スルーホール処理(ピン式、ハトメ式、ペースト式、めっき式)、レジストシルク処理を行うことも可能です。

 ペースト式スルーホール


以上のように、基板加工機は電子機器の開発において非常に有効なツールで、試作基板の作製短時間・容易に行えます。また、一台で様々な加工の用途に対応していることも大きな特長と言えます。
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